日刀保たたら
「日刀保たたら」は、公益財団法人日本美術刀剣保存協会が直接に運営するたたらであり、本協会の略称を冠して、「日刀保たたら」と呼称しています。
「たたら」とは、砂鉄と木炭をもとに、純度の高い鉄類を生産する日本古来の重要な製鉄法です。生産品の中で特に優れた鋼(はがね)を「玉鋼(たまはがね)」といい、日本刀の原材料として欠くことのできないものです。
たたらの歴史
たたら製鉄は、江戸時代、山陰地域で大いに栄えました。この我が国独特の製鉄技術は、大正期に廃絶し、戦前「日本刀鍛錬会」のもと、「靖国たたら」として復活します。しかし戦争の終結とともに、操業は途絶えてしまいました。
しかし、当協会は島根県仁多郡奥出雲町の「靖国たたら」跡地を昭和51年6月24日「日刀保たたら」として復元し、昭和52年11月8日に、高松宮殿下の御臨席のもと火入式を行い、正式に復活させました。
選定技術としての日刀保たたら
同時に、文化財保護法の選定保存技術に認定され、日立金属株式会社及び株式会社鳥上木炭銑工場の協力のもとに「たたら操業」を行い、この技術の保存と後継者の養成につとめており、生産された玉鋼等を全国の刀匠に頒布して、文化財保護に貢献しています。
このたたら操業を行う長を「村下(むらげ)」といい、村下も国から選定保存技術保持者として認定されています。過去、たたら復興時には安部由蔵、久村歓治の2名が村下として活躍しました。
その後昭和63年、久村歓治亡き後長らく空席だった村下職に木原明が就任し、安部由蔵亡き後、平成14年に渡部勝彦が村下となりました。
現在は村下2名のほか、村下代行2名、村下養成員として9名の者が技術の錬磨に励んでいます。
鉧のその後
たたら製鉄は砂鉄と木炭を交互に装入する3昼夜の操業の後、できあがった鉄の塊である約2.5トンほどの「鉧(けら)」を釜から出す作業が待っています。
この釜を壊す作業とそののちを引き出す作業を「鉧出し」といいます。
一連のたたら操業のなかで、最も緊張し、そして迫力のある場面です。
できあがった鉧からは数種の鉄が採取されます。
写真の玉鋼もふくめ、できあがった鉧からは数種の鉄が採取されます。
それぞれ含有炭素量で概ね以下の3種に分類されます。
玉鋼1級と2級
0.5~1.2%、破面がほぼ均質。
卸鉄用(おろしがねよう)
炭素量に大きなバラツキあり。主に芯鉄とする。
銑(ずく)
炭素量1.7%以上で溶解の進んだもの。